自力での電子書籍化を試してみてから一週間が経過しました。
売上の変動が完全に止まったので、とりあえずこれを現状の数字とみなして報告をさせていただきます。

現在のところ、売上冊数は8冊。
1冊75円程度のロイヤリティなので、合計700円の収支となりました。

買って頂けた方々には、本当にありがとうございます。
ただ少し、自分が期待を高く持ちすぎたという感情は否めません。

マイナージャンルのなろう作家がやる気を維持するためのモデルとして、こういった販売形式を試行してみたのですが
結果としては、かえって心が折れてエタゲージを上昇させてしまうという結論を得ました。何事もやってみるものです。

以下の追記部分で具体的な収支や今後の課題について考察してみます。
お金の話が苦手な方は、ここで止めておいていただけると幸いです。


 ※ ※ ※

・同人作家として

期待を高く持ちすぎたせいで多少凹んではいます。
が、実のところアマチュアの創作同人としては一応の成功だったかと思います。
同人活動をしていた頃は、一度のイベントで10冊の売上というのは、実際何度か経験しています。

例えば同人誌を一度のイベントで10冊印刷して、一冊500円で販売した場合
印刷費が10,000円+イベント参加費+遠征代で25000円のコストが必要となります。
そして全冊売り切ったとして収益が5,000円。

つまり、本来20,000円の赤字が出る行程を700円の収益で終えられたと思えば20,700円得をしたと考えることができます。
また同人イベントでは一日の売上が収支の全てですが、電子書籍は24時間365日販売できます。売り子も要りません。
そして何より、実本印刷のときに比べて編集装丁作業の手間が10分の1以下で済みました。
(印刷所に依頼する場合、印刷所とのやり取りなども含めてかなりの時間と手間を要するので)
実態としてはこの手間を省力化できるという点において、かなり有効な創作同人の形式だと思います。

お金も時間もないけど、同人活動をしてみたいという方には、経験上充分オススメできるモデルだったと思います。

・書籍化との比較について

とりあえず「無料で公開したものを電子書籍で有料化した際、どれほどの方にかっていただけるか」という問いに対して
一応自分が出した見解としては、ユニークPV数2000に対して8人の売上。およそ0.5%という結果です。

近年出版社から書籍化された作品のPVと販売数の比は、自分には実数がわからないので推測の域を出ませんが
およそ10倍~100倍近い差があるものと考えられます。とても比べられたものではありません。

そもそも作品がもっと優れていれば、0.5%以上の数字にできたのかもしれません。
あるいは100人に買っていただきたいと思えば、2万人のPV数が得られるような作品を目指すというのも考え方の一つだと思います。

電子書籍という媒体自体がまだ浸透していないことも含めて考えれば、この0.5%という数字は今後是正されていくかもしれません。
ですが現状の数字としては、やはりここがまだ限界のようです。参考にして頂ければ幸いです。

・適正価格について

今回の試みについて、実はこの点について最も悩みました。

もし値段を半分にすれば、倍の売上になったかもしれませんが、逆に8人という数字は変わらなかった可能性もあります。
逆に倍の値段で販売していたら、倍の売上になったかもしれませんが、逆に誰も買わず0人という結果に終わっていた可能性もあります。
そもそも実本印刷より手間が掛からないことが売りの電子書籍を、実本と同じ値段で販売するのはあまり気が進みません。

もっと言えば、いっそ「お試し用」と割り切って無料公開にしてしまうのも一つの手だったと思います。
(既に「なろう」サイト上で無料公開しているものを、更に書籍化して無料公開する意味はあまり無い気もしますが)

色々考えた末の250円という価格ですが、これが適正価格だという確証はまだ自分の中にありません。
ただ、値段を上げたり下げたりするのは、既に買って頂いた方に対して失礼に当たると考えているので
今後もこのままの価格を維持して値下げは一切行わないという考えでいきたいと思ってます。

・人数コストについて

今回、電子書籍化にこぎつけるまで友人の絵師と2人3脚でやってみたわけですが
最低2人居れば書籍化まで行ける、という実例を示せたのは良かったと思っています。

ただ、イラストを依頼できる方が見つけられるかどうかは、自分のような多くのアマチュアにとって今後の課題だと思っています。

自分の場合、同人活動時代の友人にお願いできたというのが非常に有り難いことです。
が、自分のようにイラストを描ける人間が知り合いに居るというのは、実はかなり稀なことです。

たとえばネット上のクラウドソーシングサイトで表紙デザインを募集するのが本来創作同人小説のスタンダードですが
この場合、相場としては表紙1枚につき1~2万円程度の依頼料が相場だと自分は耳にしています。

文字書きにとっては利益が出ても出なくても自己満足として終われますが、見ず知らずの絵師に対して
「一枚数百円でイラストを描いてほしい」と依頼するのは、かなり失礼な申し出になってしまうと思っています。

自己満足としてやるなら700円の売上で満足できても、他人を巻き込んでまでやるべきことかどうかは今後の課題の一つです。

・今後の方針について

今回自分の手で色んなことを試してみて気づいたのですが、自分は書き手として作品を書くこと以上に
どんなものを試しに書いてみるか、どんな方法で試しに販売してみるかという、試す行為自体が楽しいタイプの人間なんだ気づかされました。
ですが、試すという行為に人を巻き込むのは危険なことも多いとも気づきました。
「試してみたけど駄目だった」では、人に迷惑を掛けてしまう上に自分もダメージを追う羽目になってしまうのでw

結論として、現代ファンタジーというジャンルで今回の試みに打って出たのは、失敗だったかなと思います。
そもそも自分の実力がまだアマチュアであることや、週間更新に執筆ペースが追いつかず妥協してしまった点も多くありました。
この辺りの反省を踏まえて、次に試してみたいこととしては

1.いわゆるメジャーと呼ばれるようなジャンルで同じことを試して通用するのか
2.更新ペースが全てだとは思わず、書きためてから公開していく形に切り替えるべきか
3. アマチュアであることに妥協せず、何らかの形で実力を証明することを目指すか
4.そもそも無料公開→有料販売の流れが電子書籍化の最適解なのか
 
とりあえず責任をもって作品は完結まで書ききる予定ですが、その後の方針についてはまだ決まっていません。
一応続編の構想はあるのですが、書いてみたい新作のアイデアもあって、どちらにすべきか時間を置いて考えてみたいと思います。